夜。
山の端に咲くちいさな花火を見る。
どんどん上がる。どんどん散る。
赤い丸いのや、黄金色の。
どんどん上がって、どんどん散っていく。
ああきれいだなあ、かわいいなあと、とうっとりと見る。
また花火を見るために生まれたい。
もうこの世にいない、遠くの私の声だったかもしれない。
それを聞く。
真昼。
ベランダから見える下方のマンションの屋上に
黒いスーツ姿の男たちが3人、うろうろと歩き回るのを見る。
いるはずのない人達が、いるはずのない場所にいるのを見るのは、
愉快なことだ。
男達は、屋上の縁に身をかがめる。
陸上競技の「Ready」の体勢だ。
これから飛ぶのか。
さらに下方を、黒いチューブワンピース、
丸い大きなサングラスをかけた長髪の女が、
自転車に乗って、住宅地の合間を
さっ、と飛んでゆくのも見る。
それを見て、なんだかいいきもちになる。