はなす_つくる

 

某日。

ラジオを聞いていた。

とつとつと、静かに、豊かに、はなすひとがでていた。

すると、ある音楽家のイメージがうかんだ。きっとあの人だ。

声はしらないけど、たぶんそうだ。

声の佇まいがあの音楽家の音みたいだもの。

じっと耳をこらした。

「あなたにとって音楽とは?」とそのひとは聞かれた。

こたえにくい質問だ。

「…そもそも、音楽とはなんでしょうか?」

そのひとは、質問しかえした。

あとになって、その音楽家は

私が想像したひととは、まったくべつのひとであることがわかった。

でも私は確信していた。

そのひとがつくるものは素晴らしいはずだ。

はなすとは、声とは、そういうことだ。

 

某日。

なんだか…ちょっと…ねえ?ということがあり、

皆とエキナカの蕎麦屋で飲む。

ゆるゆるとはなしているうちに

「自分のつくったものの責任は、自分にしかとれない」

というところへ、おちつく。

おちついたら、皆すこしかおが晴れやかになった。

帰って、さらにビールをのみなおした。

春はビールがうまい。