台湾旅情

 

 

写真を撮ることはすきだ。

知るはずもない他者(世界)の内に展開する物語を

レンズ越しに、すきに読んでいるきもちになるから。

ナイフで切ったばかりの果実の、鮮やかに滴る断面を

おもしろく見るように。

なんという形。なんという色。

それは他者に反映する私と世界の物語なのだけど。

 

写真を撮られることはきらいだ。

ファインダーのあちら側にいる他者に

いいように解釈され、切り刻まれ、

自分で思うよりももしかしたら的確に「分類」され、

てきとうな箱の中にポイと放りこまれるのではないか、という

大変うたぐり深いきもちになるから。

おそらくこれから捨てられるバナナの皮みたいなきもち。

 

 

撮った写真を見返していくと、

見ているはずの私が、実は

見られているはずの他者に、ファインダー越しに

観察されていたことが、明確にわかるものが、出てくる。

ナイフを刺しこまれていたのは、私だった。

瞬間、ひやりとする。

そして、笑いだしたいようなきもちになる。

 

ああ、旅にでたい 旅にでたい 旅にでたい