写真を撮ることはすきだ。
知るはずもない他者(世界)の内に展開する物語を
レンズ越しに、すきに読んでいるきもちになるから。
ナイフで切ったばかりの果実の、鮮やかに滴る断面を
おもしろく見るように。
なんという形。なんという色。
それは他者に反映する私と世界の物語なのだけど。
写真を撮られることはきらいだ。
ファインダーのあちら側にいる他者に
いいように解釈され、切り刻まれ、
自分で思うよりももしかしたら的確に「分類」され、
てきとうな箱の中にポイと放りこまれるのではないか、という
大変うたぐり深いきもちになるから。
おそらくこれから捨てられるバナナの皮みたいなきもち。
撮った写真を見返していくと、
見ているはずの私が、実は
見られているはずの他者に、ファインダー越しに
観察されていたことが、明確にわかるものが、出てくる。
ナイフを刺しこまれていたのは、私だった。
瞬間、ひやりとする。
そして、笑いだしたいようなきもちになる。
ああ、旅にでたい 旅にでたい 旅にでたい