首都圏外郭放水路

 

 

11月某日。快晴。

埼玉県は春日部市へ。

首都圏外郭放水路の一般開放日。

 

放水路の上は広場になっていて、そこではその日、市民のみなさんが

飲めや歌えや踊れやの盛大なフェスティバルを開催していた。

手打ち蕎麦、お好み焼き、クレープなどの屋台をみながら放水路入り口へと進む。

若いカップルや家族連れの後をついて、深い生臭い螺旋状の階段を下っていく。

放水路では、市民楽団がオカリナでドナドナなどふいていた。

さびしげな音が放水路じゅうによく響く。

 

「なぜ今ここで、ドナドナなんだろう…」

 

と、友人Bに話しかけようとしたが

彼女は既にオカリナをふくかれらの写真を撮るために

ゲラゲラ笑いながらいいカメラでつめよっていて、横にいなかった。

 

また螺旋階段を上がって戻り、広場へ。

手打ち蕎麦を列に並んで買って食べて、きもちわるくなる。

屋台など見て歩く。

かぶと虫の幼虫が200円で売られていた。

友人Bが売っていた男性に「来年生まれるの?」と聞くと

男性は「うん、たぶん」と答えていた。

しばらくまた歩くと、今度はアメイジング・グレイスを歌う女性たちの集団がいた。

また友人Bがカメラでうれしそうにつめよるのを、遠くでうんざりと待つ。

 

広場を出ると、畑と田んぼとすすきと空が広がっていた。

さっきまであんなに人がいっぱいいたのに、

一歩外へ出るとだれもいなかった。