ベッドカバーの話

 

長年家人が使いこんでいる西川で購入した安物の布団マット。

歯を磨きながらぼんやりと眺めていたら、綺麗なもののような気がしてきて

写真に撮ってコンピュータに取り込んでコントラストを強くしたら

なんだかほんとうにとても綺麗なもののような気がしてきた。

 

それで思い出したが、

私は子どもの頃、毎日長い時間、

自分のベッドカバーにプリントされたテキスタイルや、イラストを好んで眺めていたものだった。

 

そのベッドカバーは、下部からスタートして、

8割が派手なテキスタイルのベッドカバーのイラストで、

上部2割に、ずらりと居並んで眠る子ども達の顔のイラストがプリントされていた。

さらにその子ども達の顔のイラストの上には、リアルに眠る私の顔があった。

ベッドの中の子ども、そのベッドの上の子ども、そのベッドの上の。

 

可愛いベッドカバーだったのだが、1点不穏な部分があった。

眠る子ども達の顔の下に、ベッドカバーの下へとつづくはずの、首がないのだ。

そこにはただ空白のみがあった。

私はその空白を、くる日も、くる日も、眺めた。

そうして、ある日気づいた。

これらは、生首なのだ。残念だがかれらはもう、生きてはいない。

 

今の自分の画風は、あの頃毎日毎日、長い時間眺めつづけた、

当時のスーパーで安売りされていた

子ども用のベッドカバーに、影響を受けている、

ものすごく影響を受けている、

といっても、過言ではないように思う。

そのくらい長く眺めつづけた。

あの子どもらの顔の下の空白を。